特許全文

書誌(一部省略)

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】特許第4538670号(P4538670)
(24)【登録日】平成22年7月2日(2010.7.2)
(45)【発行日】平成22年9月8日(2010.9.8)
(54)【発明の名称】階層道路を用いた都市型無信号立体交差点
(51)【国際特許分類】
E01C 1/04 (2006.01)
【FI】
E01C 1/04
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2004-110539(P2004-110539)
(22)【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
(65)【公開番号】特開2005-256578(P2005-256578A)
(43)【公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【審査請求日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】504134184
【氏名又は名称】大野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】大野 琢也
【審査官】小山 清二
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523781(JP,A)
【文献】特開昭49-001028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/04

請求の範囲

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路交差点において、道路の上り線、下り線を分離した階層道路と、立体交差するもう一方の平面1層構造の直進車線を組み合わせ、交差点の中心点において3階構造を形成し、平面1層構造側の直進車線の右左折分岐および合流地点を全て左側直進車線側に配置し、平面1層構造側の直進車線を分離または階層化せずに構成した、無信号型、無交差通行型、省用地型の合流式立体交差点の方法。

【請求項2】
請求項1記載の立体交差点において、階層道路を交差させて道路位置を入れ換えた上下線逆位置道路と、立体交差するもう一方の平面1層構造の直進車線、およびその直進車線からの独立した右折分岐車線層の1層を組み合わせ、交差点の中心点において3階構造を形成した、右左折車両の左側直進車線合流式立体交差点の方法。

図面

図1(請求項1)
fig01.jpg



図2(請求項2)
fig02.jpg

詳細な説明

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市部の用地範囲の限られた道路交差点において、敏速かつ安全な交通を実現する立体交差の技術に関する。

【背景技術】
【0002】
従来の都市部の平面2階式立体交差では、右折車両を進行させるために、直進車両と右折車両を信号機による赤信号で交互に停止させていた。その上で同一路面上を右折車両が直進車両と対面交差、十字交差して進行していた。
(右側通行の海外諸国の場合は、左折進行が対象となる。以下同様。)
【非特許文献1】永井達也著「土木がわかる本」日本実業出版社 2003年12月20日発行第24頁から第25頁、第28頁から第29頁、第66頁から第67頁

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし従来の方法では直進車両と右折車両を赤信号で交互に停止させる必要があり、また同一路面上を交差通行するため、以下の弊害が発生していた。
(1)赤信号停止による交通渋滞の発生
(2)(1)による排気ガス増大、エネルギー浪費、運送・産業の停滞
(3)交差通行による、交差点内衝突事故の発生

【0004】
そこで本発明は、信号機を廃絶することを主目的として、都市密集部の幹線道路交差点の限られた用地範囲においても、直進4方向、右折4方向、左折4方向を、全て無信号、無対面交差、無十字交差で、かつ敏速に進行させる交差点を実現することを課題とする。

【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明に関して、下記に説明する。
【0005】
左側通行の日本の場合、右折の際対向直進車線との対面交差、および交差直進車線との十字交差が発生する。それらを回避するため、左側通行そのものを交差点内で解除する方法を取る。

【0006】
図1のA⇔B方向の直進車線の上り線と下り線を分離し、地下と1階の平行した階層道路にする。(本発明では平行した上り線と下り線を分離し立体化した道路を階層道路と定義する) 図1ではA→B直進が、地下に移動している。直進車線は片側2車線ずつ全線で確保している。

【0007】
図1のC⇔D方向の直進車線は、単純な2階陸橋式の立体交差である。同じく直進2車線ずつ全線で確保している。このC⇔D方向の直進車線とA⇔B方向の階層道路を組み合わせ、交差点の中心点において3階構造の合流式立体交差点を形成し、C⇔D方向上における右左折分岐および合流地点を全て左側直進車線側に配置する。C⇔D方向の直進車線は分離または階層化することなく、直進4方向、右折4方向、左折4方向全ての無信号通行を可能とする。

【0008】
A→C右折は、地下a2右折車線から、地下c2を通り、Cへ抜ける。
A→D左折は、1階a3左折車線から、地下d1を通り、Dへ抜ける。
B→D右折は、1階b2右折車線から、地下d1を通り、Dへ抜ける。
B→C左折は、1階b1左折車線から、地下c2を通り、Cへ抜ける。
C→B右折は、1階c1右折車線から、地下b4を通り、Bへ抜ける。
C→A左折は、1階c1左折車線から、1階a1を通り、Aへ抜ける。
D→A右折は、1階d2右折車線から、1階a4を通り、Aへ抜ける。
D→B左折は、1階d2左折車線から、1階b3を通り、Bへ抜ける。

【0009】
本発明による無信号化では、以下利点も有する。
(1)直進方向の交通の流れを阻害しない
(リング式において起こりうる直進車線の流れの阻害を発生しない)
(2)対面交差、十字交差しない
(3)都市密集部の限られた道路用地範囲でも実現できる
   (片側3~4車線交差点内でも対応可能である)
(4)立体交差は地下階、地上1階、地上2階の3階層まででも実現できる
(5)平面1層構造側の直進車線部分は、既存建造済の従来型平面2階式立体交差点から移行する場合、平面1層部分の建造物資産を再利用することも可能であり、耐用年数や償却期間の終了を待つことなく追加施工して本発明の立体交差点を建造することも可能である。

【0010】(請求項2)
本請求項は、請求項1の応用型である。図2のA⇔B方向の直進車線の上り線、下り線を階層道路からさらに交差させて入れ換え、同一平面化することにより、交差点内で一時的に右側通行状態を発生させる。その上で請求項1と同様に、無信号、無対面交差、無十字交差を実現する。階層道路を入れ換えた上下線逆位置道路と、C⇔D方向の平面1層構造の直進車線、およびC⇔D方向からの独立した右折分岐車線層の1層を組み合わせ、交差点の中心点において3階構造の合流式立体交差点を形成し、C⇔D方向の直進車線を分離または階層化することなく無信号通行を可能とする。

【0011】
請求項1との違いは、本請求項の右左折車両の直進車線合流地点は、全て左側直進走行車線側から合流させている。高速道路で言う追越車線側からの合流を回避している。

【0012】
A→C右折は、地下a2右折車線から、地下c2を通り、Cへ抜ける。
A→D左折は、1階a3左折車線から、地下d1を通り、Dへ抜ける。
B→D右折は、地下b2右折車線から、地下d1を通り、Dへ抜ける。
B→C左折は、1階b1左折車線から、地下c2を通り、Cへ抜ける。
C→B右折は、1階c1右折車線から、1階b3を通り、Bへ抜ける。
C→A左折は、1階c1左折車線から、1階a1を通り、Aへ抜ける。
D→A右折は、1階d2右折車線から、1階a1を通り、Aへ抜ける。
D→B左折は、1階d2左折車線から、1階b3を通り、Bへ抜ける。

【発明の効果】
【0013】
本発明は以下の効果を奏する。請求項1の発明は、都市密集地の限られた幹線道路交差点用地範囲でも、信号機を用いることなく、全ての方角への直進、右折、左折通行を、対面交差および十字交差通行させることなく、かつ直進車線の交通を遮断することなく、敏速に通行させることができる。その副産物として、渋滞発生の回避、排出ガス・消費エネルギー低減による環境エコロジー対応、運送・産業の活性化、交差点内衝突事故低減による交通安全の効果を得ることができる。また本発明では、立体交差する一方の直進車線を分離または階層化せずに平面1層道路とすることができ、工期や工事コストの削減、および既存建造物の再利用や移行の容易化を可能とする。

【0014】
請求項2の発明は、右左折車両の左側直進走行車線への合流方式により、さらに安全交通の効果を得ることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
交差点終了後は階層道路を解除し、通常の左側通行の同一平面通行に戻してもよいが、交差点が連続する地区などでは、階層道路をそのまま継続することによって、連続した無信号交差点に対応することも可能である。

【0016】
地下道路部分を多用するため、既に現状の地上道路下に地中ケーブル、上下水道などの設備が存在し競合する場合は、これらの設備の移設が必要である。

【0017】
歩行者の横断は、歩行者の安全のため、横断歩道橋もしくは地下歩道が基本となる。その際、福祉面に配慮し、エレベータ付きの歩道橋などが望まれる。

【0018】
右折分岐、左折分岐通行が複雑な面もあり、通行車両にとって分かりづらい面もあるが、これに対しては、車載ナビゲーションシステムのルート案内活用や、分かりやすい交通標識案内板での誘導に努める。

【0019】
また地下道路内での分岐、合流など視覚的に確認が不利な面については、トンネル照明自動昼夜減光システムや、車両センサー敷設と事前表示案内板による前方停止車両ありなどの情報提示を行うなど、配慮に努める。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】請求項1の立体交差点の正面図である。
【図2】請求項2の立体交差点の正面図である。

【符号の説明】
【0021】
図1
A・・方角A、B・・方角B、C・・方角C、D・・方角D、地下・・地下1階、1階・・地上1階、2階・・地上2階、a1・・A方向側道、a2・・C方向右折車線、a3・・D方向左折車線、a4・・A方向右折車線、b1・・C方向側道、b2・・D方向右折車線、b3・・B方向側道、b4・・B方向右折車線、c1・・A、B方向側道、c2・・C方向側道、d1・・D方向側道、d2・・A、B方向側道

【0022】
図2
A・・方角A、B・・方角B、C・・方角C、D・・方角D、地下・・地下1階、1階・・地上1階、2階・・地上2階、a1・・A方向側道、a2・・C方向右折車線、a3・・D方向側道、b1・・C方向側道、b2・・D方向右折車線、b3・・B方向側道、c1・・A、B方向側道、c2・・C方向側道、d1・・D方向側道、d2・・A、B方向側道